(2021/4/21 05:00)
モノづくり日本会議と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月26日、第32回新産業技術促進検討会シンポジウムとして「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクト成果報告会を開いた。機能性材料の加工品質の向上や自動車部品の加工プロセスの効率化などを目指して、NEDOが2016年度から進めてきた「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトの成果を振り返り、今後の展開について議論した。(成果報告の詳細は27日付に掲載予定)
あいさつ
先端事例さらに蓄積
NEDO理事・今井淨氏
レーザー技術は金属やガラスの切断や表面改質といった加工に用いられ、将来のモノづくりにおける最重要ツールの一つとして期待されている。効率よく、付加価値の高い加工などを行うには多くの技術的な課題がある。プロジェクトは産学官でグリーン社会の実現とわが国モノづくり産業の競争力強化のために5年間活動し、最終年度を迎え、多くの研究開発成果を創出した。プロジェクト終了後もレーザー加工に関する産学官協創のために東京大学が設立した「TACMIコンソーシアム」と連携し、さまざまな材質、用途での加工事例を蓄積する。
講演 加工技術の活用期待
経済産業省 産業技術環境局研究開発課産業技術プロジェクト推進室室長・鷲見昭英氏
イノベーション創出に向けた政府の取り組みのうちマテリアル戦略は、人工知能(AI)、バイオ、量子、環境に続く重要戦略の一つで、わが国の科学技術イノベーションを支える基盤技術であるとともに、リチウムイオン電池に代表されるような、世界の経済、社会を支えてきた重要な分野だ。昨年10月にマテリアル戦略有識者会議を設置して議論いただいており、マテリアル戦略を正式に決定していく。この成果報告会を起点として、レーザー技術のさらなる発展や、レーザー加工装置を用いた加工技術の国内外での活用が進むことなどを期待する。
基調講演 NEDOレーザープロジェクトが生み出したもの
加工最適化から社会課題も解決
東京大学 物性研究所教授・小林洋平氏
高輝度・高効率次世代レーザー技術開発プロジェクトを始めた5年前に、背景として考えた社会課題は、人口減少・労働力減少、エネルギー・CO2問題、日本の産業力強化、などだ。手段としてIoT(モノのインターネット)やインダストリー4・0の考え方を用い、超スマート社会を目指してきた。
「経験と勘から最適化へ」をスローガンとして、25法人が加わり、レーザー加工をにらみながら、次世代のレーザー光源の開発に取り組んできた。研究開発項目は、深紫外のレーザー加工機、パワーやエネルギーの大きいレーザーの開発、レーザーダイオードなど次々世代の新しいレーザー光源、パラメーターを選択する基盤技術、新しいレーザーを用いた加工機、などだ。
期間中には島津製作所が開発している青色のファイバーカップルレーザー装置などが製品化された。プロジェクト途中で製品化したことも特徴だ。2017年には「TACMIコンソーシアム」を設立し、参画法人以外の一般会員にも加わってもらい、現在79法人・82グループが、プロジェクト終了後も活動を継続していく。
また、塚本雅裕大阪大学接合科学研究所教授らを中心に、2020年末に青色半導体レーザー接合加工研究会を設立した。このほかQDレーザが2月にマザーズ上場した。
5年前に考えた課題は、労働力減少など、コロナ禍により加速している部分もある。レーザー加工はそれらを解決するツールとして一層重要となっている。レーザー加工市場はプロジェクト発足当時1・5兆円程度だったが、現在は約2兆円だ。
近年のデジタル変革(DX)の流れにあって、知的生産システムやデータベース化の導入も更に重要となる。これらへの取り組みは、今後目標とする超スマート社会実現、カーボンニュートラル、グリーンイノベーションにおいても欠かせない。つまりこれまでの取り組みは間違っていなかったのだ。
(2021/4/21 05:00)